ナスは構造の約90%以上が水分で構成されており、内部には細かな空気の空隙(スポンジ構造)が無数に存在します。油を引いたフライパンにそのまま生のナスを放り込むと、熱によって空隙が膨張し、まるで乾いたスポンジのように油を無限に吸い込んでしまいます。これが、多くの家庭で「ナスが油っこくて重い」と感じる最大の科学的要因です。
この失敗を根本から防ぐ鍵が、ナスのアク抜きとジューシーに仕上げる下処理です。切ったナスに重量の約1%の塩を振り、室温で約10分置きます。浸透圧の作用で内部の水分が表面に浮き出ると同時にスポンジ構造が適度にしぼみ、余計な油の侵入経路が塞がれます。浮き出たアク混じりの水滴をキッチンペーパーでしっかりと拭き取るだけで、調理時の吸油量を約30%〜40%抑制できることが調理実験でも実証されています。
そしてもう一つの核心が、フライパンへの「投入順序」です。多くの人がナスを先に炒めがちですが、正解は真逆です。最初に着手すべきは、ブロックベーコンの旨味を凝縮させる焼き方にあります。
フライパンに油を敷かず(または極少量のオリーブオイルのみ)、棒状にカットしたブロックベーコンを入れ、弱火でじっくり4〜5分加熱します。ベーコン自体の脂(ラルド)をゆっくりと溶かし出し、表面がカリッとしたきつね色になった段階で、初めて下処理済みのナスを投入します。ベーコンから溶け出た濃厚な燻製の旨味エキスを含む動物性油脂をナスに適量吸わせ、蓋をして中弱火で蒸し焼きにすることで、追加の油を大量に注ぐ必要が一切なくなります。この一連のプロセスこそが、ナスが油っこくならない炒め方の理由の神髄です。