本作のクオリティを担保し、後世に残る名作へと押し上げたのは、スカーレットの脚本の評判を牽引した水橋文美江氏の繊細極まる筆致と、主演・戸田恵梨香の鬼気迫る演技力への評価に他なりません。
水橋氏は『夏子の酒』や『妹よ』など数々の名作ドラマを手掛けてきたベテランですが、本作においては「説明台詞を極限まで削ぎ落とす」という大胆な手法を取りました。心変わりや苦悩を長文のモノローグで語らせるのではなく、お茶を淹れる手のわずかな震え、すれ違いざまの沈黙、割れた陶器を見つめる瞳によって感情を雄弁に物語らせたのです。
その脚本に見事に応えたのが戸田恵梨香でした。15歳の少女期から50代の成熟した陶芸家・母に至るまでを単独で演じきり、役作りのために体重を増減させ、実際に信楽の土に向き合って陶芸の技術を習得。特に穴窯の前で灰まみれになりながら炎を見つめる鬼気迫る表情は、従来の「可愛い朝ドラヒロイン」の枠組みを完全に破壊する凄みを放っていました。
この徹底したリアリズム表現は業界内でも極めて高く評価され、放送期間中にはギャラクシー賞の選定を受けるなど、批評家筋からは手放しの賛辞が送られました。