動画切り抜きやミーム画像だけを見た若い世代の間では、「蝶野は橋本をバカにして笑っていたのではないか」「単なる悪ふざけだったのではないか」といった誤解が一部で見受けられます。しかし、現場の力学を正確に知るプロレス関係者や当時の空気感を知る識者は、その見方を明確に否定しています。
医学・心理学の観点からも、人間は極限の恐怖やプレッシャーに直面した際、自律神経の防衛本能として不随意に笑ってしまう「失笑恐怖」や「緊張の緩和」と呼ばれる生理現象を起こすことが実証されています。猪木という絶対的な巨頭を前に、20代半ばの青年レスラーにかかっていた重圧は想像を絶するものでした。
破壊王と呼ばれた橋本真也の人間味溢れる純粋さと、クールな黒のカリスマとして知られる蝶野正洋の冷静沈着なキャラクター。このふたりの絶妙なコントラストがあったからこそ、あの数秒間の映像は単なる放送事故を超え、奇跡のエンターテインメントへと昇華したといえます。