ネット上の掲示板やSNSでは、リリース当初「復帰作にしては軽快すぎる」「サントリーの爽快なCMイメージが先行したポップソング」といった表層的な受け止め方が一部に存在しました。しかし、歌詞の全文と文脈が共有されるにつれ、ネット上の評価は「聴くたびに涙腺が崩壊する」「これほど残酷で美しい歌はない」という声へと一変していきました。
洋楽圏で「Crying on the dance floor(フロアで泣きながら踊る)」と称されるジャンルがあります。抑えきれない哀しみや孤独をスローバラードで湿っぽく歌い上げるのではなく、躍動するビートの中で発散し、涙を振り払いながら踊り続ける表現形式です。「道」はまさにこの系譜に連なる傑作であり、ネット上の知恵袋やコミュニティでも「失恋ソングかと思ったら母への鎮魂歌だった」「肉親を亡くした後に聴いて意味を悟り、号泣した」という書き込みが後を絶ちません。
ポップな装飾でコーティングしながら、その内側に剥き出しの人間ドラマを封じ込める手法こそ、宇多田ヒカルの真骨頂です。「明るい曲」という先入観を持っていたリスナーほど、歌詞の深部に触れた際の衝撃と感動が大きくなる構造になっています。