「読めないなら発行した役所の窓口で教えてもらえばいい」と考える人は少なくありません。しかし、現場の市役所窓口相談の実情は、一般市民の期待とは大きく乖離しています。
自治体の戸籍担当窓口における実務方針について、複数の政令指定都市および地方自治体の窓口関係者に取材したところ、共通して次のような実態が浮き彫りになりました。
「窓口の業務は『保存されている戸籍の原本を正確に謄写(コピー)して交付すること』であり、記載内容を読み解いて公認する鑑定業務は職務権限に含まれていません。職員個人が個人的な見解として『こう読めるかもしれませんね』と助言することはあっても、誤読によって万が一の法的紛争(相続人の確定ミスなど)が生じた場合、自治体として責任を負えないため、公式な解読要求には応じられないのが実務上の原則です」(首都圏自治体の市民課窓口担当者)
SNSや知恵袋などのコミュニティ上でも、利用者の切実な生の声が散見されます。
- 「役所で除籍謄本をもらった際、『これなんて書いてあるんですか?』と聞いたら、『古い文字ですので私どもでは断定的なことは申し上げられません』と申し訳なさそうに断られた」(50代男性・相続当事者)
- 「2024年の広域交付で他県の明治戸籍を取り寄せたが、窓口が混雑していて質問できる雰囲気ですらなかった。結局、持ち帰って自分で虫眼鏡と格闘することになった」(40代女性・家系図作成中)
さらに2024年の法改正以降、広域交付によって全国の戸籍が瞬時に照会可能となった結果、窓口職員の事務負担は劇的に増大しました。古い手書き戸籍の画像データを目視確認するだけでも膨大な時間を要しており、窓口で個別の文字判読に丁寧に対応してもらうことを期待するのは、現状極めて困難と言わざるを得ません。