アイコスを開発・販売するフィリップモリス インターナショナル(PMI)は、公式発表資料において「紙巻きタバコと比較して有害物質を平均95%低減している」と一貫して主張しています。米国FDAも2020年に「曝露低減タバコ製品(MRTP)」としての販売を一部文言つきで認可しており、これは「煙が出ない加熱式は、従来の喫煙に比べ有害物質への曝露が少ない」という事実を公的機関が認めた事例としてしばしば引用されます。
しかし、ここで冷静に読み解くべきは「曝露の低減(Harm Reduction)」と「健康被害の低減(Harm Elimination)」の決定的な違いです。日本呼吸器学会や国立がん研究センターなどの独立研究機関は、以下の懸念を明確に指摘しています。
第一に、タバコ特有の有害物質が95%低減されたとしても、健康リスクや発がん率が同じく95%下がるわけではありません。微量の曝露であってもDNA損傷を引き起こす物質が存在するため、用量反応関係が非線形(少し吸っただけでもリスクが急上昇する)である可能性が濃厚です。第二に、紙巻きタバコには含まれない、あるいはごく微量しか存在しなかった熱分解由来の未知の化学物質がアイコスのエアロゾル中から複数検出されており、それらの長期的な生体毒性は今後数十年にわたる追跡調査を待たねばならないのが現状です。