信貴山観光ホテルを運営していた株式会社信貴山観光ホテルは、1950年代の創業以来、信貴山真言宗総本山である朝護孫子寺の参詣拠点として盤石の地位を築いていました。大阪市内から車で1時間弱という好立地に恵まれ、信貴山温泉の天然温泉「開運の湯」や季節の会席料理を売りに、年間を通じて多くの宿泊客を動員してきました。
しかし、同ホテルの財務基盤は2000年代以降、静かに蝕まれていました。最大の要因は「団体旅行から個人旅行へ」という旅行スタイルの構造転換です。かつて同ホテルの収益を支えていた企業の社員旅行、寺院の巡礼講、冠婚葬祭の宴会需要が急速に縮小。収容人数150名規模の大型施設を維持するための固定費が重くのしかかるようになりました。
信用調査機関の報告や倒産関連資料によると、ピーク時に数億円規模あった売上高は年々漸減。施設の大規模リニューアルに必要な設備投資資金を調達できず、設備の経年劣化が口コミ評価を押し下げるという悪循環に陥っていました。そこに直撃したのが2020年春からの新型コロナウイルス感染拡大です。インバウンド需要の消滅と国内移動制限により、稼働率は一時前年比80%以上落ち込み、借入金の返済負担に耐え切れず、2020年代前半に事業停止および破産申し立ての準備へ追い込まれることとなりました。