キャラクターに血肉を通わせたキャスト陣の熱演も、本作の評価を不動のものにしています。主人公・石田将也を演じた入野自由は、自責の念に苛まれながらも必死に前を向こうとする青年の不安定な息遣いや、喉の奥から絞り出すような感情の爆発をリアルに表現しました。
そして、生まれつき聴覚障害を持つヒロイン・西宮硝子役を務めた早見沙織の演技は、まさに圧巻の一言です。発声の練習を重ね、聴覚障害者が声を発する際の身体的なメカニズムを研究し尽くして臨んだその声は、単なる発音の模倣ではなく、硝子の心の中にある温かさ、恐れ、そして「自分のせいで周囲が壊れてしまう」という悲壮な想いをダイレクトに伝えてきます。
将也の小学生時代を担当した実力派女優・松岡茉優のどこまでも無邪気で残酷な少年声や、硝子の妹・結弦役の悠木碧による少年のような強がりと脆さの同居など、全キャストの妥協なきアプローチが作品の品格を支えています。