バイクの波が街を埋め尽くすサイゴン。昼時、熱気あふれるオフィス街のビルから吐き出されたビジネスパーソンたちが吸い込まれていくのは、洗練された暖簾が目印の店舗だ。そこで提供されているのは、甘辛く煮込まれた牛肉とツヤツヤの米。現地で「cơm bò nhật」と呼ばれるこの料理は、従来のベトナムファストフードであるフォーやバインミーに並ぶ選択肢として、驚異的なスピードで浸透している。
単なる珍しさだけで売れているのではない。ベトナム人の好みに応じた卓上調味料の追加や、パクチー・生唐辛子のトッピング対応など、繊細なローカライズが成功の火種となった。安価で美味、そして提供までのスピード。多忙な都市部の労働者層にとって、これ以上ない選択肢として定着したのだ。