マフィアのルーツは19世紀のイタリア・シチリア島にある。抑圧的な支配者から身を守るための自警団的組織が、次第に利権を独占する犯罪結社へと変貌していった。彼らは自らを「コーサ・ノストラ(我らのもの)」と呼び、沈黙の掟「オメルタ」によって結束を固めた。
20世紀初頭、大西洋を渡った移民とともにその闇はアメリカへ持ち込まれる。禁酒法時代に頭角を現したアル・カポネは、密造酒ビジネスで巨万の富を築き、シカゴを恐怖で支配した。だが、彼のような粗野な力技を近代的なビジネスモデルへと昇華させた黒幕こそが、ラッキー・ルチアーノである。
ルチアーノは不毛な流血戦を終わらせるため、全米のマフィアファミリーを統括する「コミッション(最高評議会)」を設立した。掟を制度化し、殺人すら合議制で行うシステムを構築したのだ。暴力を見せしめから「最終手段の執行」へと変え、政界や警察、港湾労働組合に深く根を張る。この構造改革によって、マフィアは単なる犯罪集団から不可視の巨大企業へと脱皮を遂げた。