家庭菜園のコミュニティで初夏によく議論されるのが、「食べたスイカの種発芽」の真偽です。「スーパーで買った甘いスイカの種をとっておいて、翌年まけば同じスイカができるのではないか」というロマンあふれる疑問ですが、植物遺伝学と流通の実態から冷静に検証する必要があります。
結論から言えば、芽を出すこと自体は物理的に可能です。黒くしっかりと充実した種であれば、前述の催芽処理によって高確率で発芽します。しかし、そこから親と同じ立派なスイカが収穫できるかといえば、答えは「極めて困難」です。現代の商業用スイカのほぼ100%は、異なる系統を掛け合わせた「F1品種(一代交配種)」です。メンデルの遺伝の法則に従い、F1から採れた種(F2世代)を育てると形質分離が起き、糖度が乗らない、皮が極端に厚い、果肉が繊維質でスカスカになるといった先祖返りの性質がランダムに現れます。
さらに深刻な盲点となるのが「土壌病害への抵抗力」です。市販のスイカ苗は、土壌伝染性の病気(つる割病など)を防ぐためにユウガオやカボチャの台木に接ぎ木されています。食べた種から自根(じこん)で育てたスイカは根が非常にデリケートで、梅雨時期の土壌過湿や病原菌によって、収穫を目前にして突然枯渇死するリスクが跳ね上がります。自由研究としての観察目的ならば推奨できますが、確実な収穫を期するなら、正規の種苗袋から種を選ぶのが賢明な判断です。
また、種の埋め方における「スイカ嫌光性種子」という生物学的特性も見落とせません。スイカの種子は光を嫌う性質を持っています。土の表面に露出していたり覆土が薄すぎたりすると、光刺激によって発芽が阻害されます。適切な深さは1cm〜1.5cm。指の第一関節の半分ほど押し込み、土を被せた後に手のひらで軽く鎮圧して種と土を密着させることが、確実な発芽の必須条件となります。