「こんにゃくの下ゆで」が一般的に推奨されるようになったのは、決して古い話ではない。食品加工技術が発達し、スーパーで売られるこんにゃくの大半が工場でアク抜き処理をされるようになったのは、昭和後期から平成にかけての量販店文化の広がりと軌を一にしている。伝統的な手づくりこんにゃくが主流だった時代は、下ゆでは「やって当たり前」の工程だったが、アク抜き済み商品の流通とともに、家庭での下処理の必要性が曖昧になってきた。
ここにネット時代の情報の混乱がある。SNS上では「昔は下ゆでしていたけど、最近は不要になった」「いや、今でもやるべき」という両論が並び、どちらも自分の経験則で語っているため噛み合わない。実際のところは、「商品によって下ゆでの必要性が違う」という一点に尽きる。パッケージの表記を確認せずに議論しているケースが多いのが、この混乱の正体だ。
また、誤解されやすいのが「白い粉=農薬や添加物のカス」という説。これは完全に間違いで、白い粉は凝固剤の水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素と反応してできた炭酸カルシウムだ。石灰石と同じ成分であり、人体への害はない。ネットの一部には「体に悪いから洗い流すべき」という投稿もあるが、科学的根拠のない過剰な不安を煽る情報と言わざるを得ない。