ここで一つの誤解を解いておきたい。「なんでんかんでん」という言葉自体は博多を含む九州の口語として使われてきたが、必ずしも博多限定の方言というわけではない。熊本や長崎、宮崎など九州各地でも類似の言い回しが確認されており、厳密には「九州地方の俗語的表現」と捉えるのが正確だ。
また、ラーメン店の「なんでんかんでん」も、店の発祥は博多ではなく東京・中野である。店名が博多弁に由来しているため「博多のラーメン店」と誤解されることがあるが、正確には「博多スタイルの豚骨ラーメンを東京で提供した店」となる。この点は「なんでんかんでん 博多」で検索する人が増えるほど混乱しやすい部分であり、本記事で明確に整理しておきたい。
もう一つの盲点は、言葉としての「なんでんかんでん」が辞書や教育現場で正式に推奨される表現ではないことだ。ビジネス文書や改まった場では「何でもかんでも」「すべて」「例外なく」と言い換えるのが無難で、あくまで口語・親しい間柄での表現と心得ておくべきである。
【プロの結論】言葉の二面性から学ぶべき教訓とおすすめできる人・できない人
この言葉の面白さは、一つの音の連なりに「地域の言葉」と「店のブランド」という二つの意味が共存している点にある。言語学的に見れば、話し言葉が世代や地域を超えて変化し、やがて固有名詞としても機能するようになる好例と言える。社会学の観点では、地域発の言葉が東京の商標や店名として全国化する過程は、地方文化の再評価と消費の一形態としても興味深い。
使い手としての判断基準を整理すると、以下のようになる。
・方言としての「なんでんかんでん」を日常会話で使ってもいい人:九州出身者、もしくは親しい間柄で砕けた表現を好む人。標準語に置き換えるよりも親しみを込めたい場面に適する。
・使わないほうが無難な人:全国規模のビジネス会議やフォーマルな文書、初対面の相手との会話では「何でもかんでも」を使うほうが誤解を生まない。
・ラーメン店の「なんでんかんでん」に向いている人:豚骨特有の強い香りや濃厚な味わいが好きな人、1990年代の東京ラーメン史に関心がある人。
・おすすめできない人:豚骨臭に敏感な人、あっさり系のラーメンを好む人、接客の均一性を最重視する人。評価が分かれる店であることを前提に訪れるべきだ。