性的な興奮が高まった際、男性器の先端から無意識に分泌される透明で粘り気のある液体は、医学的に「カウパー腺液(球尿道腺液)」と呼ばれます。この液体の主たる役割は、精液が通過する前に酸性状態にある尿道内をアルカリ性へと中和し、射精時の摩擦を軽減するための潤滑液として機能することです。
生物学的な構造上、カウパー腺液そのものが精子を生成するわけではありません。精子は精巣で造られ、副睾丸(精巣上体)に蓄えられているため、分泌器官の異なるカウパー腺から直接精子が湧き出ることはありません。この医学的事実を切り取って「我慢汁には精子がいないから妊娠しない」と主張する言説がネット上で散見されますが、これは人体の構造を無視した極めて短絡的かつ危険な誤解です。
臨床現場の医師や生殖医療の専門家が警告するように、尿道内には前回の射精によって残存した精子が存在しているケースが多々あります。さらに、性的興奮がピークに近づくにつれて、射精に至る前段階で前立腺液や精管膨大部から微量の精液成分が押し出され、カウパー腺液と混ざり合って尿道口から滲み出ることが確認されています。つまり、男性が「まだ射精していない」と自覚していても、分泌液中にはすでに数万〜数百万匹規模の運動精子が混入している可能性が十分に存在するのです。