父親との複雑な距離感の一方で、落合恵子さんの人間形成に決定的な影響を与えたのが、母・落合てるさんの存在です。てるさんは決して裕福ではない暮らしの中で、内職や仕事を掛け持ちしながら、女手一つで恵子さんを育て上げました。
どれほど生活が苦しくとも、てるさんは娘の教育と読書への投資を惜しみませんでした。「本だけはいくら読んでもいい」と、恵子さんが欲しがる本を工面して買い与え続けたエピソードは、後の作家・落合恵子の誕生を決定づけた原点と言えます。
世間からの冷たい風評から娘を守り抜き、決して卑屈にならず凛として生きる母の背中は、落合さんにとって最大の誇りであり、人生の道標となりました。落合さんが後に女性の自立や子どもの人権に深く関わる活動を始めた根底には、母・てるさんが見せてくれた不屈の生き方が深く根を張っています。