ピノコが初めて登場したのは、原作漫画の屈指の名作として名高いエピソード「畸形嚢腫(きけいのうしゅ)」(週刊少年チャンピオン1974年2月25日号掲載)です。彼女の正体は、一般的な人間として生まれた子供ではなく、双子の姉の体内で18年間育ち続けた奇形嚢腫(テラトーマ)でした。
物語は、ある名家の一族が、腹部に巨大な腫瘍を抱えた令嬢の手術を極秘裏に依頼してくるところから始まります。その腫瘍の中には、脳や目、手足、内臓、毛髪といった人間の各器官が不完全にバラバラの状態で詰まっていました。過去に複数の医師が切除を試みたものの、嚢腫自体が強力なテレパシーや脳波のような超常現象を発し、メスを曲げたり執刀医を狂乱させたりして摘出を拒絶してきたのです。
患者が絶望する中、ブラック・ジャックは嚢腫と心の中で対話を試みます。「お前を切り刻んで殺したりはしない。摘出したら、人間の体として組み立ててやる」という約束を交わすことで、嚢腫は抵抗をやめ、無事に母体から取り出されました。ブラック・ジャックは約束通り、合成樹脂(プラスチック)製の皮膚や関節、人工骨格を駆使し、摘出した臓器や脳を組み込んで一人の少女の肉体を創り上げたのです。