SNSや知恵袋などで定期的に炎上・議論を呼ぶのが「お賽銭に10円玉を使ってはいけない」という説です。その理由は極めて単純で、10を「とお」と読むことから「遠縁=縁が遠のく」と解釈される点にあります。参拝に訪れた人が善意で10円玉を投げ入れた直後、連れから「10円は縁起が悪いよ」と指摘されて気まずい思いをしたという体験談も散見されます。
民俗学や神社本庁の公式見解に照らし合わせると、この解釈には宗教的根拠が一切ありません。神社本庁の広報担当者や各地の宮司が語るように、神道において神に捧げるのは「誠の心」と「日頃の感謝」であり、硬貨の数字の読み替えによって神罰が下るような教えは存在しないのが事実です。
「10円=遠縁」という説は、昭和後期から平成にかけての民放テレビ番組や大衆娯楽雑誌が、初詣特集の面白ネタとして紹介した言葉遊びが源流とされています。10円青銅貨の素材である銅は、古来より殺菌・浄化の力を持つ貴金属として祭具や神鏡にも重用されてきました。言葉の連想ゲームだけで硬貨の価値を否定するのは、文化的な本質を見誤った過度な迷信に過ぎません。