漂流郵便局を語る上で欠かせない存在が、初代局長を務めた中田勝久氏です。中田局長は実際に旧粟島郵便局で永年局長を務めていた元・本物の郵便局長であり、プロジェクト発足時に「漂流郵便局長」として就任しました。制服を身に纏い、訪れる人々を温かい笑顔と深い包容力で迎え入れ、届いた手紙を一通一通手作業で私書箱へ収めてきました。
訪れた人々の評判や感想を検証すると、単なる観光地巡りとは一線を画す感情の吐露が多く見受けられます。
「見知らぬ誰かが亡き夫へ宛てた手紙を読んだ時、自分と同じ悲しみを抱えて生きている人がいると知り、涙が止まらなくなると同時に救われた」(40代女性・来訪者)
「薄暗い局内に吊るされた真鍮のモビールと波の音の中、過去の自分に詫びる手紙を静かに書いた。胸のつかえが初めて取れた気がする」(30代男性・来訪者)
局内の中央には、旧郵便局の私書箱を活かした回転式の装置「漂流私書箱」が設置されています。波のようにゆらめく真鍮の羽根が手紙を包み込み、訪れた人はどの箱を開けても、そこに漂着した見知らぬ誰かの物語に触れることができます。他者の手紙を読むことが、翻って自身の心と向き合う鏡となる——この特異な体験こそが、多くの支持を集める理由です。
また、これらの手紙の一部は書籍『漂流郵便局 届け先のわからない手紙を預かる郵便局』(久保田沙耶 著・小学館)としてもまとめられており、島を訪れることが難しい全国の読者にも深い感動を与えています。