恐山といえば、盲目の女性巫女が死者の霊を降ろして語りかける「イタコの口寄せ」を思い浮かべる人も多いはずだ。だが、イタコは寺院に常駐しているわけではない。主に7月の「恐山大祭」や10月の「恐山秋詣り」の期間中に出張という形で境内へ入る。高齢化が進み、現在その伝統を継承するイタコはごくわずかとなった。早朝から長蛇の列ができるため、口寄せを希望するなら相応の覚悟が必要だ。
この地の歴史は深い。862年、天台宗の高僧・慈覚大師円仁が夢告に導かれて開山したと伝えられる。その後、中世の荒廃を経て、現在は曹洞宗の寺院として格式を保っている。恐山菩提寺の境内に足を踏み入れると、数千年にわたる人間の祈りと哀愁が重なり合った独自の歴史の真相が浮かび上がってくる。