二人の原点は、北海道足寄郡足寄町にある。千春と同郷の孝子さんは、彼がまだプロの歌手として名乗りを上げる前の青年時代に出会っていた。
当時の千春は、ギター一本を抱えて夢を追う無名の若者。決して裕福とは言えない環境のなか、地元の仲間たちと音楽に情熱を燃やしていた彼を、孝子さんは特別な見返りも求めず見守り続けた。派手な自己主張を嫌い、黙って話を聴いてくれる彼女の存在は、血気盛んな千春にとって唯一無二の安らぎの場となっていく。
音楽業界の荒波に揉まれる以前の、何者でもなかった自分を知っている存在。だからこそ千春は、ブレイク後も彼女への信頼を揺るがせることはなかった。