眠っている愛犬の身体が震えているとき、飼い主が最初に直面するのは「このまま様子を見てよいのか」という逡巡です。まず把握すべきは、犬が寝ている時の痙攣の理由として最も頻度の高い「レム睡眠(浅い眠り)」による筋肉の痙攣(ミオクローヌス)と、中枢神経の電気的ショートによる「痙攣発作」の根本的な機序の違いです。
犬の睡眠周期は人間よりも短く、約20分周期で深いノンレム睡眠と浅いレム睡眠を繰り返します。身体の筋肉の緊張が緩み、脳だけが活発に活動しているレム睡眠中には、日中の記憶の整理や情動の処理が行われます。この過程で大脳から微小な運動シグナルが漏れ出ると、四肢の先や口元、ヒゲが細かく動く「生理的ミオクローヌス」が生じます。これは健康な生体反応そのものであり、過度な心配はいりません。
一方、臨床的に極めて警戒すべきは、脳神経の過剰興奮によって生じるてんかん発作などの病理的痙攣です。犬のレム睡眠と痙攣発作の見分け方において、決定的な識別基準となるのは「意識の有無」と「外部刺激への反応性」です。生理現象であれば、名前を優しく呼んだり、背中をそっと撫でたりすることで意識が覚醒し、何事もなかったかのように動きを止めます。しかし、病的な痙攣発作に陥っている場合、脳幹や大脳皮質の制御が完全に破綻しているため、強い呼びかけにも一切反応せず、視線が定まらない、あるいは四肢をピーンと突っ張ったまま硬直を続けます。