古びたプラスチック製品を漂白する技術として、海外のレトロPC愛好家の間で開発された「レトロブライト(Retr0Bright)」という手法があります。これをスマホケースに応用したのが、ワイドハイター浸け置き紫外線照射テクニックです。
具体的な手順としては、ガラス容器に酸素系液体漂白剤(過酸化水素と漂白活性化剤を含有するもの)をケースが浸かるまで満たし、紫外線の強い直射日光に数日間晒すというものです。この過程で発生するヒドロキシラジカル等の活性酸素種が、TPU内部のキノン構造を酸化的に破壊し、退色させる作用を持ちます。
現場検証の結果、確かに数日間の浸け置きによって、濃い琥珀色だったケースが薄いレモンイエロー程度にまでトーンアップする現象は確認できました。しかし、この方法には2つの決定的な代償が伴います。
第一に、TPUクリアケース黄ばみ原因である結合破壊を、漂白剤と紫外線でさらに強制加速させているため、素材自体の劣化が急激に進みます。検証後のケースは本来の弾力性を失って硬化し、四隅に微小なクラック(ひび割れ)が生じるなど、耐衝撃カバーとしての基本性能が著しく低下しました。
第二に、オキシクリーン漂白手順においても同様ですが、粉末型酸素系漂白剤(過炭酸ナトリウム)を溶かした45〜60度のお湯に浸け置いた場合、TPUの熱変形温度を超えてしまい、スマホ本体にパチンと嵌まらなくなる寸法狂いが高確率で発生します。労力と薬品代をかけて得られるのが「少し色が薄くなったが、脆くて歪んだケース」であるならば、実用面での価値は極めて低いと言わざるを得ません。