自動車のハンチングトラブルに関して、ネット上には根強い「誤解」が流布しています。その筆頭が「スパークプラグやイグニッションコイルを交換すれば直る」という言説です。
確かに点火系の不良によってエンジンが不整脈を起こすことはありますが、点火不良の症状は特定の気筒が動かなくなる「失火(ミスファイア)」であり、周期的に回転数が上下するハンチングとは挙動が異なります。失火の場合はドッドッドッという重苦しい振動とともに回転が低迷し、加速時に息継ぎを起こします。原因の切り分けを誤り、高価なプラグやコイルを総交換したもののハンチングが一切解消しなかったという無駄骨の事例は枚挙にいとまがありません。
もう一つの重大な盲点が、「電子制御スロットルの急速TAS学習(スロットル全閉位置学習)の未実施」です。2000年代中盤以降の車両の多くは、スロットル開度をECUが自動学習しています。バッテリーの端子を外したり、スロットル周辺を清掃した後は、ECUに記録されている学習値と実際のバルブ開度にズレが生じます。このリセットと再学習を診断機や規定の手順(キー操作による初期化コマンド)で行わない限り、たとえ機械的に汚れを取り除いてもECUが狂った数値を参照し続け、激しいハンチングを誘発します。「掃除したのに壊れた」と勘違いするケースの大半は、この学習工程の見落としが原因です。