獣医学的な判定基準が存在するにもかかわらず、飼育現場やSNS上では「オスだと思って名前をつけて育てていたら、避妊手術の事前検査でメスだと判明した」「動物病院に連れて行ったらカルテの性別が書き直された」といったトラブルや笑い話が後を絶ちません。なぜこのような子猫の性別の見間違いが起きる経緯が生じるのでしょうか。
保護猫活動に携わる現場ボランティアへの取材や、大手Q&Aサイト・コミュニティに投稿された数千件の実例を分析すると、誤認を引き起こす主な要因は次の3点に集約されます。
- 生後2週未満の被毛や皮膚のむくみ:生まれたての子猫は陰部周辺が軽度の浮腫(むくみ)を起こしていることが多く、メスの陰唇周辺のふくらみがオスの陰嚢のように見えてしまう現象が多発します。
- 陰部の被毛の毛束をタマタマと誤認:生後3〜4週頃になると被毛が密生してきます。肛門下にある左右の毛の生え癖や毛束の塊が丸く膨らんで見え、指先で触れた際の感触を「精巣が降りてきた」と飼い主が思い込んでしまうケースです。
- 兄弟間での比較対象が存在しない単独保護:保護現場に1頭だけで持ち込まれた子猫の場合、距離感を比較する相手がいません。「間隔が広い」と感じていても、実はその月齢のメスとしては標準的な距離であったという見誤りが頻発します。
実際に保護シェルター関係者は次のように証言します。「生後2週間の段階で里親募集をかける際、オスとして掲載していた子が、生後1ヶ月を過ぎて再検診した際にメスと分かり、募集要項を修正することは現場の日常茶飯事です。経験を積んだ保護スタッフでも、生後1ヶ月未満の単独判定には極めて慎重になります」。
確実を期すためには、自宅での自己判断のみに依存せず、初回の健康診断やノミ・マダニ駆除薬の処方のために受診する動物病院での子猫の性別診断を受けることが最も確実なプロセスとなります。動物病院では獣医師がルーペを用いた拡大視診や、骨盤腔周囲の精密な触診を行うため、無用な誤解を未然に防ぐことができます。