田村正和を語る上で、父である伝説的映画スター・阪東妻三郎の存在を外すことはできない。大正から昭和初期のサイレント映画時代を切り拓き、松竹をはじめとする映画史に不滅の足跡を刻んだ巨星だ。父が47歳の若さで急逝したとき、正和はまだ9歳。父の偉大さと早すぎる喪失は、彼の役者人生に決定的な陰影を与えた。
長男の高廣、三男の正和、四男の田村亮。「田村三兄弟」として知られる彼らは、三者三様の個性で日本の芸能界を支え続けた。重厚な存在感を放った高廣、端正な二枚目として親しまれる亮、そして誰にも真似できない浮世離れした気品を纏った正和。三兄弟はいずれも父の看板に頼ることなく、自らの肉体と言葉で役者としての地位を築き上げていった。