医療機関で酸素吸入を行う際、最初に選択される代表的な器具が「酸素マスク(簡易酸素マスク)」と「鼻カニューラ(経鼻カニューラ)」です。両者の決定的な違いは、「投与できる酸素濃度」と「患者の呼吸の自由度」にあります。
鼻の穴に細い管を差し込む鼻カニューラは、毎分1〜5リットルの低〜中流量で使用されます。装着したまま会話や食事が可能で、口呼吸中心の重症患者でなければ日常生活を維持しやすいのが最大の利点です。吸入できる酸素濃度(FiO2)はおよそ24〜40%程度にとどまります。
一方、鼻と口を覆う簡易酸素マスクは、毎分5〜8リットルの流量設定で用いられ、約40〜60%の中濃度酸素を安定して送り込みます。ここで極めて重要な注意点があります。簡易マスクを使用する場合、「最低でも毎分5リットル以上」の流量を維持しなければなりません。流量が5リットルを下回ると、マスク内に患者自身が吐き出した二酸化炭素が滞留し、それを再び吸い込んでしまう「再呼吸」が発生して窒息の危険が生じるためです。