ネット上の法律相談掲示板やSNSでは、「被害弁償を行って示談を成立させれば、執行猶予を取れるのではないか」という安易な言説が散見されます。しかし、この言説には致命的な誤解が含まれています。現実の刑事弁護において、強盗事件における示談の成立は極めて困難を極めます。
まず直面するのが、強盗事件の示談金相場と減刑における金額の壁です。単なる財物の窃盗であれば「被害額+迷惑料数十万円」で示談がまとまるケースもありますが、自宅という最も安全であるべき私的空間を暴行・脅迫で蹂躙された被害者の精神的打撃は計り知れません。強盗致傷事件ともなれば、示談金の相場は数百万円から1,000万円超に達することも珍しくありません。目先の数十万円に困窮して闇バイトに応募したような被告人やその家族に、こうした巨額の賠償金を即座に用意できる資力があるはずもありません。
さらに根本的な問題として、被害者の強固な処罰感情が立ちはだかります。深夜に凶器を持った見知らぬ集団に押し入られ、命の危機に晒された被害者や遺族は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を患うなど長期にわたる苦痛を強いられます。「お金を受け取って犯人の刑を軽くするくらいなら、1日でも長く刑務所に入っていてほしい」と示談交渉のテーブルに着くこと自体を断固拒否されるケースが大半を占めます。
仮に家族が奔走して多額の借金を背負い、奇跡的に被害弁償が一部受け入れられたとしても、罪名が強盗致傷や悪質な集団強盗である場合、公序良俗と社会的影響の観点から刑務所行きを免れることはできません。示談は「懲役12年が懲役9年に短縮される」といった有期刑の期間短縮(減刑)には寄与するものの、執行猶予を勝ち取るための免罪符には絶対になり得ないのが司法の冷厳な判断基準です。