Mr.Childrenが2001年8月にリリースした20枚目のシングル『優しい歌』。このタイトルは、ファンの間では長年「娘である優歌さんの名前に由来している」と信じられてきました。
当時の音楽雑誌のインタビューや特番において、桜井和寿はこの楽曲が生まれた背景について「これまでは自分自身のために歌ってきたが、誰かのために歌いたいという明確な意志が生まれた」「自分を肯定し、同時に他者を愛するための歌」と語っています。当時の桜井は離婚騒動や世間からの激しいバッシングを経験し、精神的な危機と自己嫌悪の底にいました。
歌詞の中にある《誰かの為に 生きてみても / 誰かの為になりきれなくて》《後悔の歌 / 甘えていた 鏡の中の男に今 / 復讐を誓う》という痛烈な自己批判。そして、《出口のない自問自答》《優しい歌をお勧めします》へと繋がる展開には、自らの身勝手さで傷つけてしまった前妻や、離れて暮らすことになった愛娘・優歌さんへの贖罪と、純粋な幸福を祈る親心が色濃く影を落としています。
音楽評論家の間でも、『優しい歌』はMr.Childrenが内省的なロックから、より広範な大衆と他者を包み込む「ポップスの王道」へと舵を切った決定的な転換点として位置づけられています。愛娘の名前を直接冠したと明言することは避けたものの、ひとりの父親としての悔恨と深い慈しみが、この名曲の根底に流れていることは間違いありません。