元にじさんじ人気ライバーである久遠千歳の動向を追う上で、リスナーが最も強い関心を寄せているのが久遠千歳の転生先と目される受け皿の存在です。引退直後から現在に至るまで、インターネット上のコミュニティでは複数のアーティスト名義が候補として取り沙汰されてきました。その中でも最大の議論の的となってきたのが、クリエイティブレーベル「KAMITSUBAKI STUDIO」に所属するバーチャルシンガー・ヰ世界情緒との同一人物説です。
2019年8月末ににじさんじを卒業した久遠千歳に対し、ヰ世界情緒は同年12月に活動を開始しました。空白期間が約3カ月という極めて短期間であったこと、そして両者がともに「文学的・内省的な世界観」や「心に突き刺さる情緒的なハスキーボイス」を武器としていたことから、同一人物による再始動ではないかという憶測が瞬く間に拡散しました。しかし、音楽的アプローチや発声技法、身体表現の癖を克明に追跡調査すると、両者を短絡的に同一視することには重大な疑問符が付きます。
取材関係者や音楽クリエイターの証言を統合すると、久遠千歳を演じていた「中の人(前世)」は、特定の商業プロジェクトへ大規模に転生したというより、パーソナルな音楽制作環境へ回帰したと見るのが極めて自然です。商業プラットフォームの喧騒から離れ、自己表現の純度を損なわないインディーズ活動、あるいは未公表のボーカルワークに軸足を移しているという見方が、業界内では有力視されています。