ネット上の言説やショート動画などでは、経済の断片的な側面だけを切り取った極論が拡散されがちです。ここでは、初心者が陥りやすい3大誤解をファクトベースで是正します。
誤解1:「円安=悪、円高=正義」という単眼思考
「過度な円安は国力の衰退であり、国民を貧しくするだけの悪である」という論調が目立ちます。確かに、輸入エネルギーや食料品価格の高騰は家計を直接痛めつけます。しかし、マクロ経済の構造上、円安はトヨタ自動車をはじめとする主要輸出企業の円建て売上を劇的に押し上げ、国内の設備投資や賃上げ余力を生み出す最大のエンジンとなってきました。一方で、かつて民主党政権期に経験した1ドル=70円台の超円高時代には、国内製造業の拠点が次々と海外へ流出し、激しいデフレと雇用崩壊が起きた歴史を忘れてはなりません。経済において絶対的な善悪はなく、為替は常に「誰が得をして、誰が痛みを被るか」の分配問題に過ぎません。
誤解2:「国の借金が1000兆円を超えたから日本は財政破綻する」
財務省の広報や一部メディアで繰り返される「国の借金が天文学的数字に達し、将来破綻する」という言説も、マクロ的なバランスシートを無視した短絡的な見方です。日本国債の大部分は「自国通貨(円)建て」で発行されており、通貨発行権を持つ中央銀行が存在する限り、デフォルト(債務不履行)を起こすリスクは極めて限定的です。また、日本政府は膨大な対外純資産や政府保有資産を保有しています。本当に警戒すべきリスクは形式的な破綻ではなく、無秩序な国債増発による通貨信用の失墜と、それに伴うハイパーインフレ(悪性のインフレ)なのです。
誤解3:「金利上昇は経済にとって最悪のシナリオである」
ゼロ金利に慣れ親しんだ日本人にとって、金利の復活は借入コスト増という恐怖として受け止められがちです。しかし、本来の市場経済において金利とは「お金の値段(資本の効率性)」を示すシグナルです。金利がゼロである状態が長期化した結果、低生産性の「ゾンビ企業」が延命し、社会全体の生産性向上や成長産業への人材移動が阻害されてきました。適正な金利がつくことで、成長性の高い事業へ資金が再配分され、預金者にも利息収入が還元されるという新陳代謝が促されます。痛みを伴うものの、長期的な日本経済の体質改善には不可欠なステップです。