2016年の『君の名は。』が巻き起こした社会現象のあと、新海誠監督とRADWIMPSは凄まじいプレッシャーの中で『天気の子』の制作に向き合っていました。2018年、表現者として様々な思索と試練の渦中にあった野田洋次郎が、新海監督へ送った初期デモ音源の中に含まれていたのが本作でした。
制作陣の証言によると、当時プロットの決定打を模索していた新海監督は、届いた『愛にできることはまだあるかい』を聴き、「この楽曲に導かれるようにして、主人公・帆高の物語を描き切る覚悟が決まった」と周囲に明かしています。楽曲が単なる劇伴ではなく、映画のコンセプトそのものを決定づける道標となった瞬間でした。
サウンドトラック収録曲の中でも、三浦透子の澄んだボーカルが疾走する『グランドエスケープ』が「現状からの脱出」を歌うのに対し、『愛にできることはまだあるかい』は「引き受けた運命の重み」を背負い続ける覚悟を歌っており、両曲が見事な対比を描いています。