芸能界随一の肉通として知られる寺門ジモン氏がかつて語ったように、肉の真価は「脂の融点」と「職人の包丁の入れ方」で決まる。カルビ家が誇る名物の牛カルビは、まさにその哲学を体現した仕上がりだ。
特筆すべきは、選び抜かれた黒毛和牛の端肉や切り落としを巧みにメニューへ組み込む手腕にある。歩留まりの限界を攻め、熟練の手作業でスジを丁寧に取り除く。この仕込みの手間を惜しまないからこそ、口の中で筋繊維がほろりと解け、上質な脂の甘みが舌全体へと広がるのだ。最上位ランクの肉と同等の旨みを、大衆的な価格帯の一皿に宿らせる。この見えない仕込みの精度こそが、同店を競合ひしめく焼肉界の頂点付近に押し上げている原動力と言っていい。