物語が進行するにつれ、この入れ替わり事件が単なる後宮内の小競り合いではなく、皇位継承を揺るがす巨大な国家転覆計画の引き金であった事実が浮き彫りになります。雛宮の暗部で糸を引いていた黒幕の正体は、自らの血統を次期皇帝に据えようと画策する外戚有力者と、それに呼応した怪異な道士たちです。
皇太子・辰歌成(しん かせい)は、当初は姿を変えられた玲琳の真意を測りかねて苦悩します。しかし、玲琳が放つ規格外の行動力、他者を思いやる揺るぎない眼差し、そして何より幼少期から培われた知性と胆力を前に、外見が「忌み嫌われる悪女・慧月」であろうとも、その魂こそが愛する玲琳本人であると確信を深めていきます。歌成の冷徹な観察眼と玲琳への深い敬愛が、黒幕たちの偽装工作を次々と瓦解させていく展開は圧巻のひと言に尽きます。
原作小説および『小説家になろう』掲載版から続く一連の騒乱の結末において、黒幕の陰謀は二人の共闘によって白日の下に晒されます。最も読者の関心を集める「元の身体に戻るのか」という問いに対し、物語は単なる原状復帰にとどまらない劇的な回答を用意しています。道術の解呪と宮廷の浄化を経て、二人はそれぞれの罪と宿命に決着をつける道を選び取ります。
注目すべきは慧月の末路です。一般的な悪役令嬢作品のような惨たらしい処刑や国外追放ではなく、彼女は玲琳の過酷な痛みをその身で味わい、自身の歪んだ嫉妬の本質を直視させられたことで、玲琳に魂を救済される形を迎えます。罪を償うための厳しい奉仕を課されつつも、玲琳の最大の理解者であり、影の協力者として生きる道を与えられた慧月の姿は、多くの読者に深い感動を残しました。