映画を見返した誰もが抱く疑問が、「なぜマルコム本人は自分が死んでいる事実に気づかなかったのか」という点です。この疑問に対する答えは、作中でコールが語る「死者の特徴」の中に明確に示されています。
コールは劇中、死者について次のような決定的な特徴を口にしています。
- 死者には自分が見たいものしか見えない
- お互いに他の死者の存在が見えない
- 自分が死んだことに気づいていない
マルコムは「妻との関係が冷え切ってしまった」「自分を無視している」と解釈していましたが、実際には妻アンナに彼の姿が見えておらず、声も届いていなかっただけでした。レストランの記念日ディナーの場面でも、アンナはマルコムを無視していたのではなく、亡き夫を偲んで一人で席についていたのです。
さらに、マルコムがコールの母親と対面しているように見えるシーンでも、母親とマルコムの間で言葉のキャッチボールは一度も交わされていません。マルコムの主観では「ぎこちない沈黙」に見えていた状況が、客観的には「誰もいない空間」だったという極めて巧妙な映像トリックが成立しています。