四方を重厚な煉瓦壁に囲まれた中庭。普段は凛とした空気に包まれるこの中庭が、一年に一度だけ劇的な変貌を遂げる。春の訪れとともに中庭の中央で咲き乱れるのが、京都守護職・松平容保の名を冠した「容保桜(かたもりざくら)」だ。かつてこの地にあった京都守護職上屋敷にちなんで名付けられたこの桜は、山桜と大島桜の交配種とされる珍しい品種で、大輪の白い花びらが徐々に淡い紅色へと変化していく。
毎年春に開催される「観桜会」の期間中は、普段は静謐な中庭が、この奇跡の桜を一目見ようと集まる人々で華やぐ。空を四角く切り取るネオルネサンスの赤煉瓦と、頭上を覆い尽くす薄紅色の花びら。石造りの西洋建築と日本の桜が交錯するこのコントラストは、日本中を探してもここにしかない圧倒的な美の光景だ。