彼女の才能の源流を探るうえで、劇団「□字ック」の存在は外せない。2010年代の演劇シーンにおいて、山田佳奈子が紡ぐ台詞は異様なほどの生々しさを誇っていた。男女の醜悪なエゴや歪んだ恋愛観、どうしても捨てきれない執着。そうした感情の泥々した部分を、ユーモアと切なさを交えて描き切る手腕は、当時の演劇ファンを瞬く間に虜にした。
舞台という限られた空間で培われた密室劇の緊密さと、役者の肉体から絞り出される感情の熱量。これが後の映画制作における強力な武器となる。虚飾を剥ぎ取り、剥き出しの人間を浮き彫りにする独特の眼差しは、この演劇時代にすでに完成していたのだ。