大相撲における最高峰の昇進には、厳格極まりない不文律が存在する。日本相撲協会が掲げる基本内規において、大関が横綱へ昇格するための原則は「大関の地位で2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績」と定められている。だが、この「準ずる成績」という曖昧な表現の背後には、数字以上の厳格な精査が待ち構えている。
審判部や有識者で構成される横綱審議委員会が注視するのは、単なる13勝2敗や優勝同点といった星取り勘定だけではない。土俵際での粘り、立ち合いの厳しさ、勝負が決まった後の礼儀作法、さらには取り口の美しさまでが対象となる。過去には準優勝でも内容を評価されて推挙された事例がある一方、優勝争いを演じながらも「相撲内容に覇気がない」「勝ち方に品格を欠く」として見送られたケースも少なくない。
相撲という神事に根ざした伝統文化において、横綱は単なるチャンピオンではない。土俵の神聖さを体現する「生き神」としての精神性が求められるからこそ、昇進のハードルは現代のプロスポーツ界でも類を見ないほど高い。