物語の中盤、親戚の家を出て横穴(防空壕)での自給自足生活を始めた清太と節子は、夜の暗闇を紛らわせるために大量の蛍を捕まえ、蚊帳の中に放ちます。青白く淡い光が部屋一面を満たし、節子が歓声をあげるこのシークエンスは、映画屈指の美しさを誇る名場面です。
しかし、この幻想的な演出の直後、あまりにも残酷な現実が突きつけられます。翌朝、蚊帳の底には無数の蛍が無残に転がり、冷たく事切れていました。高畑勲監督は、蛍の「わずか数日という極端に短い寿命」を、清太と節子が迎える運命の明確な予兆として配置しています。
光り輝く時間は一瞬であり、強い光を放つほどに生命力は急速に摩耗していく。自活という名の孤立を選び、刹那的な幸福に浸るふたりの命が、蚊帳の中の蛍と同じように急速にすり減っている事実を、死骸となった蛍の姿が生々しく物語っています。