長年にわたり、幕末のドラマは「新時代を開く革新派(薩長)」対「古き制度にしがみつく守旧派(幕府)」という解釈が主流だった。しかし、近年の史料分析によって、その構図は完全に過去のものとなりつつある。
佐幕派の中心人物たちは、決して西洋の文明や技術を拒絶していたわけではない。むしろ、幕府は黒船来航以降、勝海舟らを派遣した咸臨丸の渡米や洋式海軍の創設、さらには造船所や製鉄所の建設など、極めて高度で組織的な近代化政策を速いペースで実行していた。彼らが警戒したのは改革そのものではなく、急速すぎる政権の崩壊が招く国内の無秩序と、それに乗じた外国勢力の軍事干渉であった。国の平和と独立を維持するための手段として「幕府体制の刷新」を選択したのが、彼らの本質である。