原氏の学問的アプローチの特異性を理解するうえで、その類まれなキャリアを把握することは欠かせません。1962年に東京都で生まれた原氏は、慶應義塾大学法学部政治学科で学びました。卒業後は研究者への道を直行したのではなく、日本経済新聞社に入社して政治部記者として激動の昭和末期の政界を取材した経歴を持っています。
永田町の密室で繰り広げられる権力闘争や政治家たちの生々しい権力亡者ぶりを至近距離で目撃した経験は、同氏に「制度やイデオロギーの表層だけを見ていては、政治の本質は見抜けない」という強い批判意識を植え付けました。新聞社を退社後、東京大学大学院法学政治学研究科へと進学し、近代日本政治思想史の重鎮・坂野潤治氏らに師事します。
東京大学社会科学研究所の助手を経て、明治学院大学国際学部の教授に就任。同大学には長年籍を置き、国際平和研究所の所長なども歴任しました。教鞭を執りながら、丸山眞男らに代表される従来の言葉中心の政治思想史に対し、建築、空間、移動手段、儀礼といった視覚的・空間的要素から政治権力を解剖する「空間政治学」の手法を切り拓いていきました。その後、2016年に放送大学へ拠点を移し、より開かれた通信教育の現場で多くの社会人やシニア層に政治学の面白さを伝えてきた歴史があります。