ネット上の情報や旅行ブログでは、「道後温泉のトレビの泉にお金を投げると良縁に恵まれる」「再訪の願いが叶うパワースポット」といった記述が散見されます。しかし、これらは純粋な都市伝説であり、歴史的な典拠は一切存在しません。
最大の盲点は、放生園の中央に据えられている「湯釜」が松山市の有形文化財にも指定される歴史的宝物である点です。湯釜の上部には「南無阿弥陀仏」の名号が刻まれており、一遍上人にゆかりを持つ極めて神聖な遺構です。賽銭感覚で石造物に硬貨をぶつける行為は、文化財を摩耗・損傷させる行為にほかなりません。
さらに、「投げ入れられたお金は寄付金として役立てられている」という言説も誤解です。現場で回収された硬貨は、泉質の影響で錆や緑青が付着しているケースが多く、そのまま銀行で入金処理を行おうとすると「汚損硬貨」として鑑別手数料が額面以上にかかる事態が生じます。善意のつもりで投げ入れた1枚の100円玉が、自治体の管理コストを圧迫しているという事実は、広く知られるべき現実です。