少年編初期において最大のミステリーであり、切ないドラマを内包しているのが、育ての親である孫悟飯じっちゃんとの死別です。物語開始時、悟空は「じっちゃんはある夜ポックリ死んじまった。巨大な化け物が出た」とブルマに語っていました。しかし読者が知る通り、その怪物の正体こそが満月を見て大猿化した悟空自身でした。
サイヤ人の生来の特徴であるシッポは、満月から放射される1700万ゼノ以上の「ブルーツ波」を目から吸収することで、全身の細胞を激変させ、戦闘力を平常時の10倍へと跳ね上げるトリガーとなっています。理性を完全に失った大猿悟空は、力及ばず立ちはだかった最愛の育ての親を踏み潰してしまったのでした。じっちゃん自身は死後、あの世で占いババの戦士として悟空と再会した際も、悟空にトラウマを与えないよう真相を伏せ続けました。「シッポさえなくなれば満月を見ても化け物にはならない」と知っていたじっちゃんは、仮面をつけて悟空の弱点であるシッポを掴み、武道家として最後の教えを授けたのです。
悟空自身が「じっちゃんを殺したのは自分だった」と気づく瞬間は、物語が大きく進んだサイヤ人編、ベジータが大猿に変身した場面でした。「満月…巨大なサル…じっちゃんを踏み潰した怪物…まさかオラだったのか…!」と戦慄するモノローグは、少年編のほのぼのとした冒険譚の裏に隠されていた残酷な運命の重みを読者に突きつけ、深い感動と痛惜を呼びました。