「1歳を過ぎたのに、部屋中を走り回って全く落ち着かない」「要求吠えやイタズラが子犬の頃より激しくなった」という相談は、ドッグトレーナーのもとにも数多く寄せられます。トイプードルの成犬はいつ落ち着くのかという問いに対し、現場の専門家たちが口を揃えるのは「精神的な落ち着きが訪れるのは2歳から3歳頃」という事実です。
身体は1歳で成犬になっても、脳内の精神的発達には時間差があります。生後8ヶ月から1歳半頃までは、人間でいう「思春期・反抗期」の真っ只中にあたります。体力が有り余る一方で警戒心や自己主張が芽生え、飼い主の指示に対してあえて反抗的な態度を取る時期なのです。成犬になっても落ち着きがない背景には、主に3つの明確な理由が存在します。
第1に、絶対的な運動量と知的好奇心の不足です。トイプードルはもともと水鳥の回収を行っていた猟犬(カモ猟の回収犬)をルーツに持ち、全犬種の中でもボーダーコリーに次ぐ第2位の知能の高さを誇ります。小型犬だからと室内遊びだけで済ませていると、エネルギーが消化不良を起こし、室内での突発的なダッシュや破壊行動へと直結します。
第2に、飼い主の過剰反応による「興奮の強化」です。愛犬が興奮して吠えたり暴れたりした際、甲高い声で「ダメでしょ!」「どうしたの?」と声をかけたり抱き上げたりすると、犬側は「暴れれば構ってもらえる」「飼い主が一緒に興奮して遊んでくれている」と誤解します。飼い主の行動が、落ち着きのない性格を無意識に助長しているケースが極めて多いのです。
そして第3の盲点が、ドッグフードの切り替えタイミングと給餌量の不整合です。子犬用フードは成長に必要な高タンパク・高脂質設計になっていますが、骨格の成長が止まる生後10〜12ヶ月頃に成犬用フードへと切り替えないと、エネルギー過多から肥満を招くだけでなく、血糖値の急変動によってイライラや落ち着きのなさを引き起こす要因になります。
成犬期のご飯の量を計算する際は、パッケージの記載を鵜呑みにせず、基礎代謝を基にしたRER(安静時エネルギー要求量=70×体重kgの0.75乗)に、避妊・去勢の有無に応じた係数(成犬未去勢:1.6〜1.8、避妊・去勢済み:1.4〜1.6など)を掛け合わせたDER(1日あたりのエネルギー要求量)を算出するのが理想的です。フードの切り替え時は、10日ほどかけて従来のフードに新フードを1割ずつ混ぜ、腸内環境を崩さないよう慎重に進める必要があります。