SNSやネット掲示板を検証すると、この両疾患には今なお根強い誤解や、医学的に極めて危険なアドバイスが散見されます。最も警戒すべきは、「単なる気の持ちようだから深呼吸して我慢しろ」という精神論です。
第一の誤解は、「発作が起きたらとにかく深呼吸をすれば落ち着く」という思い込みです。パニック発作に伴う過呼吸症候群に対して、焦って大きく息を吸い込む深呼吸を繰り返すと、血中二酸化炭素濃度がさらに急低下し、手足の激しい痙攣や意識混濁を招いて症状を悪化させます。正しいアプローチは「吸うこと」ではなく、「少しずつ長く息を吐き出すこと」です。
第二の盲点は、迷走神経反射の前兆を感じているにもかかわらず、「根性で立って耐えようとする」行為です。迷走神経反射は意志の力で抑え込めるものではありません。徐脈と血管拡張によって脳の血流が物理的に低下しているため、立ち続けようとすればほぼ確実に意識消失に至ります。その際に硬いアスファルトや駅のプラットホーム、階段で頭部を強打し、頭蓋内出血や骨折などの重大な外傷を負うリスクこそが、迷走神経反射における最大の脅威です。「気分が悪い」と感じた瞬間、恥を捨ててその場にしゃがみ込む決断が、重大事故を防ぐ唯一の防壁となります。