水洗トイレのメカニズムを語る上で欠かせないのが、背面に設置された給水タンク内部の機械構造です。蓋を開けると複雑そうに見えますが、動作に関わっている基本パーツは主に4つしかありません。これらがパズルのように噛み合うことで、完全自動の給排水サイクルが成立しています。
レバーハンドルを回すと、タンク内部で繋がっている鎖(チェーン)が引っ張り上げられ、底面にあるゴム製の「フロート弁(フロートバルブ)」が持ち上がります。これによりタンク底の大きな穴が開き、数リットルの水が一気に便器へと勢いよく流れ落ちます。フロート弁は浮力を持つゴム球などで作られており、タンク内の水が抜けて水面が下がるまで浮いた状態を維持し、水が完全に抜けきると自重で再び底の穴に密着して栓をします。
タンクの水位が下がると同時に作動するのが、給水を司る「ボールタップ」と、水面に浮いている「浮き球」です。浮き球が水面の低下に伴って下方に下がると、連動したアームがテコの原理でボールタップ内部の弁(ダイヤフラム)を開き、水道管から新鮮な水が勢いよく給水され始めます。タンクに水が溜まるにつれて浮き球が再び上昇し、規定の水位に達した瞬間にアームが弁を押し戻して給水を完全に遮断します。
万が一、ボールタップの故障などで給水が止まらなくなった場合に備え、中央には「オーバーフロー管(溢水管)」が垂直に直立しています。管の上部には「-WL-」という刻印があり、これはタンクの標準水位(Water Level)を示しています。水がこの標準ラインを超えて溢れそうになると、オーバーフロー管のてっぺんから便器の中へと水が自然に逃げる設計になっており、タンクから水が溢れ出して床が水浸しになる大惨事を未然に防いでいます。