大切なものは目に見えない真意とは?キツネの言葉が心に刺さる理由

大切なものは目に見えない真意とは?キツネの言葉が心に刺さる理由

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この言葉の重みを理解する上で絶対に外せないのが、著者サン=テグジュペリ自身の壮絶な生い立ちと実体験です。 航空輸送の黎明期、夜間飛行のパイロットとして幾多の死線をくぐり抜けた彼は、1935年12月、パリからサイゴン(現ホーチミン)への飛行記録樹立に挑む途上、リビア砂漠へ墜落しました。機関士のプレヴォとともに、水も食料もほとんどない灼熱の砂漠を3日間にわたってさまよい、奇跡的に遊牧民(ベドウィン)に救出されたのです。 後年の自著手記『人間の土地』において、彼は渇きと脱水による幻覚の中で直面した極限の心情を克明に記録しています。 「人間を動かすものは何なのか。水の一滴、パンの一片を求めて歩き続ける中で、本当に価値を持つのは財産でも名誉でもなく、遠く離れた妻や友人たちの微笑み、人と人とを結ぶ絆だった」 砂漠という、あらゆる余計な物質が剥ぎ取られた絶対の空白地帯において、著者は骨身にしみて悟りました。人間の真の渇きを潤すのは、目に見える物質ではなく、「自分を待っていてくれる誰かの存在」という目に見えない結びつきであるという事実です。 その後、第二次世界大戦が勃発。ナチス・ドイツの侵略によって祖国フランスを追われ、失意のまま亡命したアメリカ・ニューヨークで『星の王子さま』は執筆されました(1943年刊行)。引き裂かれた世界、疑心暗鬼が支配する戦火の時代だからこそ、彼は子どもたち、そして「かつて子どもだった大人たち」に向けて、人間が本当に見失ってはならない核心をキツネの口を借りて遺したのです。

鈴木 陽菜
著者

鈴木 陽菜

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