国民栄誉賞は、1977年にホームラン世界記録を樹立した王貞治氏のために創設された内閣総理大臣表彰です。「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があった者」を受賞基準としていますが、その法的根拠は内閣府設置法に基づく内閣総理大臣の裁量であり、明確な数値基準が存在するわけではありません。
これまで授与された歴代受賞者と、打診を固辞した辞退者の実態を比較すると、イチロー氏の決断がいかに特殊であるかがデータからも鮮明になります。
歴代の主な辞退者としては、1983年に世界盗塁記録を樹立した福本豊氏が有名です。福本氏は「そんな大層な賞をもろたら、立ちションベンもでけへんようになる」という名言を残し、一市民としての気楽さを理由に辞退しました。また、水泳界の巨頭である古橋廣之進氏(後に文化勲章を受章)も現役引退から年月が経ちすぎていることを理由に固辞しています。
近年では大谷翔平選手も2021年の大活躍時に打診を受けた際、「まだその域に達していない」として辞退した経緯がありますが、イチロー氏のように「現役時代に2度、引退時に1度」と人生の異なるステージで3度も辞退し続けた例は歴史上他に存在しません。