工藤静香と中島みゆき、そして後藤次利というトライアングルは、80年代後半から『MUGO・ん…色っぽい』『黄砂に吹かれて』など数々のヒットを世に送り出してきました。その集大成として1993年に結実したのが『慟哭』です。
工藤静香 慟哭 誕生秘話における決定的な契機は、ポニーキャニオンの名プロデューサー・渡辺有三氏と後藤次利氏が仕掛けた「アイドルから本格派シンガーへの完全移行」という明確なブランディング戦略にありました。当時の音楽関係者の証言によると、制作陣は従来の哀愁歌謡路線を踏襲しつつも、90年代初頭のダンサブルなビートと洗練されたポップス感を融合させる新たなアプローチを模索していました。
そこで中島みゆき 作詞の依頼にあたり、単なる悲恋ではなく「女性の強がりと、その裏にある張り裂けそうな孤独」という二面性を工藤静香の声質にぶつける設計がなされました。当時20代前半を迎えていた工藤のハスキーかつ芯のあるボーカルと、中島みゆきが紡ぐ重厚な人間ドラマが見事に共鳴し、時代を象徴するメガヒットへと昇華したのです。