物語の核心である結末において、読者が目撃するのは救いのない「完全なる共依存の完成」です。第一部の終盤、指揮者・茂実星悟との不毛な泥沼不倫によって心身ともにボロボロになり、中絶や借金、社会的信用まで失った蘭花は、すべてを優しく受け入れてくれた留利絵の手を取り、「留利絵だけが私の本当の友達」と涙を流して感謝します。読者はここで、過酷な恋愛から生還した女性の再生物語という印象を抱きます。
しかし、第二部で語られる留利絵のモノローグによって、その光景は一瞬で血の気の引くホラーへと反転します。留利絵は蘭花を救おうとしていたのではなく、「美しく輝く蘭花を自分の手で徹底的に貶め、自分なしでは息もできない無力な存在に作り変えること」を目的に動いていました。
ラストシーンにおいて、留利絵はボロボロになった蘭花を自身の生活圏内に囲い込み、食事から身の回りの世話までを甲斐甲斐しく焼きながら、至上の悦楽に浸ります。蘭花は留利絵の底知れぬ悪意と策略に生涯気づくことなく、留利絵に感謝しながら搾取され続ける未来が確定します。一方で留利絵もまた、蘭花という存在に人生のすべてを捧げて縛り付けられており、どちらが支配者でどちらが獲物なのか判別がつかない、背筋の凍るエンディングを迎えます。