なぜカタログに記載されたWLTCモード燃費と、実際に公道を走らせた時の実燃費の間にはこれほどの乖離が生まれるのでしょうか。その背景には、車両構造の物理的限界と日本の走行環境がもたらす構造的な要因が存在します。
決定的な要因の第一は、車両重量の物理的格差です。セダンタイプであるスズキ アルトの車重が約710kgであるのに対し、ホンダ N-BOXやダイハツ タントなどのスーパーハイトワゴンは930〜970kgに達します。これは大人3〜4名が常に余計に乗車している状態に等しく、信号待ちからの発進加速(ゼロ発進)時に莫大な燃料エネルギーを消費します。WLTCモードの市街地テストは定められた加速度パターンで行われますが、現実のストップ&ゴーではより力強い踏み込みを強いられるため、車重の重い車種ほど燃料消費が悪化します。
第二の要因は、前面投影面積と空気抵抗(Cd値)です。スーパーハイトワゴンは全高が1,750mmを超え、見晴らしや車内の開放感に優れる反面、高速巡航時には巨大な空気の壁を押しながら走ることになります。時速80km/hを超えたあたりからエンジン回転数は跳ね上がり、カタログ上の「高速道路モード燃費」数値を維持することが極めて困難になります。
さらに見落とされがちなのが、エアコン使用時や短距離走行(いわゆるチョイ乗り)における排気量660ccエンジンの熱効率低下です。普通車に比べて余力の少ない軽自動車のエンジンは、エアコンコンプレッサーの作動負荷がダイレクトに燃費へ響き、夏場や冬場にはカタログ値の6割程度まで落ち込むケースも珍しくありません。